送り出し機関におけるベトナム人日本語教師に必要なスキルは何でしょうか?
勿論、日本語能力(特に会話)が高い事に越したことはありません。
ただ、N1を持っていても、相応しいとは限りません。
これまで幾つかのセンターで働き、ベトナム人教師の多くに欠けていると感じるのは、生徒一人ひとりの日本語力を正しく判断して、まだ日本語が下手な生徒に対して、何かしらの措置を取る能力が低いことです。
1クラスに15人も生徒がいれば必ず日本語の習熟度や学習スピードに差が出ます。
毎日、生徒と6時間も接しているので、彼らの「日本語能力の差」には気づいているはずです・・・でも、淡々の授業を進めてしまう。
仮に授業レベルを理解している生徒に合わせてしまうと、能力の低い生徒は全く理解することが出来ません。逆に授業レベルを落とすと、頭の良い生徒にとって物足りない授業になってしまいます。
この場合はレベルの低い生徒に対して、時間外の補習授業を行うか?下のクラスに落とすしかありません。
この「生徒の放置」は私が気付き、指摘する事が非常に多いのです。
まだ、センターに来て半月〜1ヶ月程度なら、下のクラスに落としても残りの学習期間である程度のレベルまで持っていくことが出来ます。
しかし、みんなの日本語25課が終了した時点で気づいても、もう、遅いのです。
今のセンターで先生たちに言っているのは、「会話は私が責任を持つので、単語力だけは管理してください」です。
仮に100満点の単語テストで60点の生徒がいたとします。
他のセンターにいた先生は◯を付け、点数を書き生徒に「もっと頑張ってね」と返していました。
これで終わりです。
これでは、肝心な会話力がつくわけがありません。
100点とは言わずとも、90点が取れるまで、何回でも繰り返します。
そして、一定期間の後に記憶が定着しているか?再テストをします。
当センターではこれらの繰り返しテストをスプレッドシートで共有して、私も先生たちも見ることが出来ます。
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皆さんが学生の頃にこんな先生がいませんでしたか。
始業時間と共に、教室に入っているやいなや、数十年使い、命より大切な「授業ノート」を開きます。
そのノートを見て、ノートに書いてある内容を黒板に書き写します。
お笑いも無く(←これは必要)ひたすら退屈な授業でした。
これに近いベトナム人日本語講師も結構いますね。
さて、ここからは付録になります。と言うより、袋とじ扱いでしょうか。
私が「恐らくは正解」だと思うベトナム人に対する日本語教育です。
(そんなの当たり前だったらすみません}
子供の頃から、勉強が好き(嫌いでない)生徒は自分なりの勉強方法が確立出来ています。
・単語を効率的に覚える方法
・計算問題を早く解く方法
・上手に教科書を読む方法などです
送り出し機関でも、これらの生徒は先生のスキルとは関係なく、グングンと日本語が上達します。
実はワタクシこれらの生徒に興味がないのです。
半年も一緒にいたのに、最後まで名前が覚えられなかった生徒もいます。
日本人の私が集中すべきは学力の低い生徒です!
学力レベルで並べて、どうでしょうか・・・下位の10%程度の生徒は「日本語の勉強方法」がわからないのです。
彼らは「分からない所が分からない」のです。
彼らに対しては「頑張りなさい」でなく、これ以上はないレベルまで細かく、学習の指示を出す必要があります。
そして、与えた課題のチェックをひたすら繰り返します。
会話に関しては120%「習うより慣れろ」です。
耳にタコが出来るまで聞き、顎が疲れるまで私と会話をします。
技能実習生の場合、到達すべき日本語レベルはみんなの日本語第50課ですが、生徒によっては6ヶ月で50課まで終了しない人間もいます。
主に建設関連で30歳を大きく超えた男性です。
彼らに対しては目標を「第25課」に設定します。
理解出来ていないのに、無理やり進むより、25課までを確実に理解した方が日本に行ってから役に立ちます。
持論なのですが、特別な生徒でない限り、センターに来てから4ヶ月位は傍から見て目立った進歩が見られません。
実際には少しづつ上手にはなっているのですが、定型の質問に答えるのが目一杯です。
・入学〜4ヶ月=日本語難しい+つまらない+日本人と会話が成り立たない
・5〜6ヶ月目=日本語簡単+面白い+日本人と会話が出来る
実際に会話のキャッチボールが出来るようになるのは、最後の2ヶ月です。
こうなると、廊下で会ったときでも、生徒の方から積極的に話しかけてきます。
私も食事やコーヒーに誘うのですが、自分のボキャブラリーを駆使して、日本語で話そうと努力します。
1つのクラスで3時間続けて、会話の授業をしても、終わった時に皆さんから「楽しかった〜」「先生また明日ね〜」「バイバイ〜」と言われる授業を続けていれば、必ず、最後の2ヶ月で日本人と会話が出来る様になるのです。
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ここからは袋とじの第二弾です。
日本語がなかなか上手にならない生徒がいたら、是非、試してみてください。
私の会話の授業ですが、生徒に質問すると同時に、発した質問を文字打ちします。
その文字は生徒が見ているクラスのモニターに表示されます。
生徒は耳だけでなく、「目」からも情報が入ってきます。
人の声は見えないし、残りません。まだ、日本語に慣れていない生徒は音声だけで質問に答えるのはむずかしいのです。
「耳」と「目」で質問を認識〜理解して答えることが出来ます。
同じ質問でも、生徒のレベルや進捗度に応じてテキストは調整します。
1)けさ なに を たべましたか?
2)今朝(けさ)何(なに) を 食(た)べました?
3)今朝、何を食べましたか?
この様に単語間にスペースを設けたり、漢字の読み方を段々と難しくしていきます。
クラスの中で1〜2人は簡単な質問でも全く答えることの出来ない生徒がいます。
そんな生徒の場合は質問と同時に答えも文字打ちしてしまいます。
Q:けさ なに を たべましたか?
A:けさ パン を たべました。
生徒はモニターの答えを読んでいるだけなので、実際に自分では答えていません。
ただ、これをひたすら繰り返していると、自分で答えている様な錯覚をするのです。
そして、数ヶ月掛かりますが、最終的には自分の力で答えられる様になります。
これは120%効果があります。
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